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刑事コロンボ(R・ヴォーン氏ゲストの2本)
さらば提督歌声の消えた海

プロテクター電光石火


刑事コロンボ

●さらば提督
ヴォーンさんのぎろぎろした眼つきと怪しいムード、惚れなおした〜。この人、悪役のほうがイケるかも。正直、ナポさんよりえーぞ!
なんつうかな、この人ってじょうずに淹れた珈琲みたいに、さっぱりと、口当りいい苦味がある。その苦味を殺さず、調和しつつ和らげるミルクみたいだったのが、イリヤだ。きりりと冷たい、新鮮なミルク。そして甘みを添えるお砂糖が、女性ゲストたち・・これは余談。

『提督』は作りが凝ってて、いつもの『コロンボ』を、ひとひねりしてある。
つまり『コロンボ』はいつも冒頭で犯人が被害者を殺し、アリバイ工作し、それをコロンボが追いつめるって作り。
この話は、冒頭でヴォーンさんが、被害者となる“提督”と大ゲンカするシーンにはじまる。
次のシーンではもう“提督”が殺されて倒れており、ヴォーンさんがそばに立ってる。そしてヴォーンさんが事故死に偽装、アリバイ工作のシーンが、えんえんつづく。
こりゃてっきり犯人だなと思って見てると、なんとヴォーンさん、中盤で殺されてしまう。
“提督”殺しも、ヴォーンさんじゃなかったことが判明する。
さて真犯人はだれでしょう? ・・って作り。
この話、むかし見たことあったが、そのころはまだ面白さが判りきれなかった。いや〜大人にはなるもんだねえ。今回、はじめてこの話のよさが判ったよ。つまり、ヴォーンさんが前半、いかにも犯人らしい怪しいムードで引っぱってるからこそ、面白い。いちばん重要な役なのね。
しいて言えば、このヴォーンさんに自発的にアリバイ工作させるほど、つまりヴォーンさんの上を行くほど、真犯人が利口そうに見えないのが、この話の唯一の欠点だが・・。

ヴォーンさんの役柄は、ワンマンな“提督”の娘と金めあてで結婚した、野心家の男。
かれはやり手で、経営する造船所の売上を伸ばすが、ロマンチストで純粋な海の男である“提督”は、金もうけしか頭にないこの娘ムコと仲が悪い。ヴォーンさんの造船所はまだ名義だけ“提督”のだから、よけいこじれてる。
“提督”の娘、ヴォーンさんの妻は、ややファザ・コン気味。毎日、酒びたり。それらしいことは一言も言わないのに、ダンナに惚れてるってのが、見てて判るからすごい。ダンナが自分の財産めあてだってことも、ちゃんと知ってそう。だからこそ、父親とダンナの板ばさみになってるのが、つらい。その結果、お酒に逃げてる。
この役を演じてる女優さんもうまいが、なにより、ヴォーンさんが圧倒的に素敵なんだ〜。財産めあてで結婚した男の役なのに、よそに女作ったり、酒びたりの妻を殴ったり、物を叩きこわしたり・・なんて、ありきたりの悪党にならない、なりきれないとこが、じつにいい。
この男なら、たとえ金めあてでも、父親と仲が悪くて毎日つらくても、飲んだくれずにいられなくても、そばにいてほしいって妻の気持が、見てて納得できる。
「もう飲むな!」ってグラスをとりあげ、妻をドナるヴォーンさん。フェミニストだったナポさんのときは決して見せなかった、こんなお姿。うっとり〜^m^*)

ヴォーンさん、海軍ふうの紺のピーコートがお似合い。“提督”に化けてアリバイ工作のシーンの、海の男の正装もまぶしい。
でも、特筆ものなのはファースト・シーン、船上パーティーでの服装。ヴォーンさんはサファリ・ジャケットふうのくだけたシャツに、首にスカーフ巻いてる。いやでも、アフリカの密林で女ターザンや、着ぐるみゴリラといっしょにモンキー・ダンス踊ってたナポさん思い出すってば(笑)。・・まあ、それはともかく。
“提督”の殺害現場でも、この服を着てる。場所は“提督”の部屋。死体を横にあれこれ証拠インメツしてるところへ、玄関のベルが鳴る。
ヴォーンさん、玄関に足を向けるが、扉を開けるまえに玄関わきの暗い鏡に向かい、髪の乱れを直し、マフラーの位置をちょっと直す。この一瞬の、あくまで冷静な顔が、ドキドキするほど悪そうで、イイよぉ〜!
それから、にっこり笑って玄関の扉を開け、「提督はいま電話に出てるから」と届け物を受け取り、「○○が××を届けに来てくれましたよ」と声をかけつつ奥の部屋にひっこみ、戻ってきて「ありがとう。喜んでたよ」と手渡してきたふりをし、まだ“提督”が生きてるように1人芝居する・・。
それどころか、「さあ、ぼくもそろそろ帰るか」と、訪問者といっしょに玄関を出て車を出し、帰宅するところをしっかり見せて、アリバイ工作。な、なんて素敵なんだ!

でも、なによりいいのは、ヴォーンさんのしぐさ。とくに、コロンボにかかってきた電話をとりつぐシーン。コロンボに受話器をわたし、電話のわきのソファにすわってると、コロンボがなれなれしくヴォーンさんのすぐ横に腰かけてきて、話しながら肩まで組んでくる。コロンボと電話の間にはさまれ、肩をすくめて目の前を横切る電話のコードをもてあましたり、口元に指をあてたり。なんだか、高貴な猫がじゃれてるみたい。
ヴォーンさんの洗練されたしぐさに、ふとナポさんが見えた。それどころか、となりにイリヤの気配まで見えてきたのには、びっくりした。なんなんだろうな、あれは?

つくづく、よくできた話である。ロサンゼルス州は財産が夫婦共有制だなんて、はじめて知った。これが重要な伏線で、ヴォーンさんが、自分が殺してもいない殺人を事故死に偽装する動機になってるが、くわしく書くとネタバレになってしまうんで・・以下略。
座禅にこってるフラワー・チルドレン風の若い娘なんてのが出てきて、時代を感じさせる。この子のマネして座禅くもうとしたコロンボが、どうしてもあぐらがかけず、片方だけ脚曲げて、伸ばしたほうの自分の脚ゆびさし「ちょいとそっちの脚、取ってもらえます?」なんて場面は秀逸。このへん、額田やえ子さんの訳も冴えまくり。
ただ、なにしろヴォーンさんが素晴しすぎるんで、何回も見てると、かれの出番が終わったとたん見る気しなくなるのは、どうしたもんか・・☆
04.7/14

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